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馬賊で見る「満州」 張作霖の歩んだ道 澁谷由里 講談社選書メチエ
馬賊、大陸浪人、張作霖…いずれも近代の中国史に関心のある人にとっては有名なキーワードだが、これまでまともに研究の対象とする人はほとんどいなかったろう。それくらい、キワ物感が漂う言葉なのだ。私自身も、張学良に関する本は何冊か読んでいるが、張作霖をメインにすえた書物は初めて手にする。
張作霖といえば、中国での評価はかなり低い。馬賊上がりの時代遅れの軍閥で、日本の力を借りようとした漢奸で…。西安事件を引き起こして共産党を救った息子の張学良に比べると、父親の評価は最悪に近い。しかし、それもこれも、共産党を正統とする歴史観から生み出された一面的な理屈にしかすぎないことをこの本は明らかにしてくれる。 確かに張作霖は極貧の家庭で生まれた馬賊出身だったが、王永江などの有能な官僚を使い、近代的な政権づくりに努めた。自分の政権基盤を固めるために日本とも協力したが、それは日本の傀儡などではなく、時には日本の利害と対立する局面もあった。だからこそ関東軍は張作霖を爆殺した。 日本人にとっては、いわく付きの歴史である「満州」だが、今までとは違う視点から「満州」を、東アジアの歴史を見ることができる。馬賊と匪賊の違い、なんて言うマニアックな記述も実証的で説得力に富んでいる。今までわかったつもりでいたことが、いい加減な知識であったことを知らされる。 若い研究者(といっても、相当力量のある人だ)が、こういうテーマを選んで、これだけ充実した書物をものにするようになったということに、時代の変化を感じてしまう。
by funazushi
| 2005-12-16 17:00
| 歴史
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